登校といじめ・不適切指導 ― 全国事例から考える改善策と法的対応 ―
全国で増える不登校といじめ
文部科学省によると、2023年度の全国の不登校児童生徒は小中高あわせて約41万人、いじめ認知件数は73万件を超える。長期欠席や生命・心身・財産に重大な被害があった「重大事態」は1,300件以上に上る。
一見「本人の気持ちの問題」に見える不登校も、実際は学校環境や教員対応、支援不足など複合的な要因が絡む。統計の裏には、子どもたちの声なき苦しみが存在する。
< 視点 >
「学校に行きたくない」という子どもの声は、心理的な弱さの現れではなく、環境や対応の問題を反映していることが多い。大人が気づかず放置することは、学ぶ権利や心身の安全を脅かす行為です。
1. いじめの事例と対応
事例(全国)
- 東京都:クラス内仲間外し、SNSでの誹謗中傷 → 不登校
- 福岡県:学年主任が把握していた複数のいじめを放置 → 登校拒否
- 北海道:給食拒否や席移動拒否などの陰湿ないじめ → 長期欠席
- 大阪府:部活動で暴言・身体的圧迫 → 改善指導後も不登校
心理的影響とケア
いじめは児童の自己肯定感や情緒安定に深刻な影響を与える。長期的には、不安症、うつ症状、社会不適応の原因となる。心理士やスクールカウンセラーによる早期支援が不可欠であり、個別面談やグループ療法、表現活動(絵や文章で感情表現)なども効果的。
対応フロー(例)
- 発覚・通報
- 生徒・保護者・教員が匿名窓口に通報
- 学校外の相談窓口や子ども家庭支援センターも活用
- 初期調査・心理安全確保
- 学校で事実確認
- 心理士やスクールカウンセラーによる面談
- 第三者機関による調査
- 重大事態として独立委員会が調査
- 対策・改善策
- 加害者への指導・懲戒
- 学びの多様化提供(フリースクール、オンライン学習)
- 保護者・地域・専門機関との連携支援
- フォローアップ
- 心理支援継続
- 定期的な状況確認
< 視点 >
いじめ対応は迅速さと心理的安全の確保が鍵。単なる表面的な解決策では、子どもが学校や大人を信頼できなくなる恐れがあります。
2. 教員による不適切指導と対応
事例(全国)
- 神奈川県:担任の人格否定的発言 → 長期不登校
- 大阪府:部活動で平手打ちや過酷運動を強制 → 怪我発生
- 愛知県:発達障害の生徒に「どうせできない」と発言 → 長期欠席
- 九州地方:授業中長時間立たせ、人格否定の発言を繰り返す
心理学的解説とケア
教員の不適切指導は、子どもに深刻な心理的ダメージを与える。心理士によるトラウマケアやストレスマネジメント、学習支援が必要。特に発達障害や精神的脆弱性のある児童は、個別対応が必須となる。
対応フロー(例)
- 通報・内部告発
- 教員や保護者から報告
- 暫定措置
- 加害教員を指導から外す
- 被害児童の心理的安全確保
- 第三者調査
- 服務規律・いじめ防止法違反を外部機関で検証
- 懲戒・法的措置
- 懲戒処分、刑事告訴や暴行罪・傷害罪を検討
- 再発防止策
- 教員研修、人権・多様性教育
- 職場環境改善、ストレス対策
- 外部支援機関との連携
- 心理士、臨床心理士、地域の子ども家庭支援センターと連携
- 必要に応じて医療機関やソーシャルワーカーと協働
< 視点 >
不適切指導は単なる教育の不手際ではなく、児童の権利侵害です。法的責任や心理的支援を組み合わせた対応が重要です。
3. 不登校に至った事例と対応
事例(全国)
- 神奈川県:担任の暴言 → 半年以上不登校
- 京都府:いじめ+教員の叱責 → 登校拒否
- 熊本県:発達障害の児童に支援不足 → 不登校
- 沖縄県:集団いじめと学校軽視 → 長期不登校
対応フロー(例)
- 登校拒否の確認
- 保護者面談、心理的安全確認
- 原因分析
- いじめ、不適切指導、学習環境の問題を特定
- 教育の多様化提供
- フリースクール、オンライン学習、個別指導
- 心理的ケア・外部支援
- スクールカウンセラー、心理士による定期面談
- 必要に応じて医療機関、臨床心理士、ソーシャルワーカーとの連携
- 法的確認
- 教育権保障、不適切指導があれば懲戒・刑事責任検討
- フォローアップ
- 学習進捗・心理状態の定期確認
- 教育委員会・専門機関との連携
文章版図解イメージ
【発覚・通報】→【初期調査・心理安全確保】→【第三者調査】
↓
【原因特定】→【懲戒・改善策・法的対応】
↓
【学びの多様化提供・心理ケア・外部支援】
↓
【フォローアップ・定期確認】
< 視点 >
不登校は「子どもの甘え」ではなく、環境要因による心理的反応です。専門家による心理ケアと学びの多様化の提供が早期回復につながります。
法的枠組みと刑事責任
- いじめ防止対策推進法:心理的・物理的攻撃は「いじめ」、重大事態は調査義務
- 学校教育法・服務規律:体罰・差別的発言は違法、懲戒処分対象
- 刑事責任:暴行罪、傷害罪、強要罪・名誉毀損罪
< 視点 >
教育現場での行為は、場合によって刑事責任の対象になります。子どもの権利と命を守る責任は法律でも守られています。
今後の改善策と支援体制
- 第三者機関による調査義務化
- 子どもの声を尊重する窓口(匿名相談・通報、内部告発者保護)
- 学びの多様化の制度化(フリースクール、オンライン学習)
- 教員研修の義務化(人権・心理・多様性理解、法令遵守)
- 懲戒と職場環境改善のセット(過重労働・ストレス対策)
- 心理的ケアと外部支援の連携
- スクールカウンセラー、心理士、臨床心理士、医療機関、子ども家庭支援センター
- 保護者や地域と連携し、学びと心の両面を支える
< 視点 >
教員も人間です。負担が過剰なら子どもへの対応もゆがみます。研修と支援体制整備が、教育の質と子どもの安全を守るカギです。
つまり
全国の事例から、不登校は「気持ちの問題」ではなく、いじめ・不適切指導・支援不足などの環境要因が大きいことが明らかです。
法令遵守、第三者チェック、学びの多様化、心理ケア、外部支援、教員研修・職場環境改善によって、子ども一人ひとりの学ぶ権利と心身の安全を守る教育環境を構築することが急務です。
体罰・暴言・人格否定は不適切指導に留まらず、刑事責任の対象となる場合もあります。学校現場全体で自覚し、子どもを守る文化を根付かせることが求められます。
基金の対応
今後、難病を持った学生への支援と並行して対応できるよう仕組み作りを進めています。